ありふれた溢れ出る感想ブログ

エンタメごとを綴っております

映画『影裏〈えいり〉』和製ブロークバック・マウンテン

 

 

2024. 9.3 初見

 

 

 

心地よい余韻が残る映画にまた出会えた

 

予告以外なにも予備知識を入れることなく観始めた今作、

情報が溢れかえるこの世界でその選択は正しかったと思えた

 

 

【ざっくりあらすじ】

舞台は岩手県

今野〈綾野剛〉は転勤で盛岡に越してきて間もない

会社で出会った日浅〈松田龍平〉という男、飄々とした彼と会話を交わすうち ともに30歳ということもあって打ち解けていく

地酒を呑み、語らい、魚釣りや映画に行き...

慣れない土地で育まれていく友情

しかし日浅は今野に何も告げないまま突然会社をやめて姿を消す___

 

 

こういう、感じ取って心で味わう映画って大好き

 

説明を極力省いて登場人物の言動でふわっと匂わせる

それでいてしっかり意味が伝わってくる

 

東北の美しい一面、そしてあの日の物悲しい景色と共に

2人の男の絶妙な距離感と繊細な芝居が素晴らしかった

他の作品と比べる必要もないけれど、

これは和製のブロークバック・マウンテンだなと観終わって思ったりした

 

 

【キャスト】

改めて綾野剛さんの芝居好きだなぁと思った

やわらかく、時に鋭く、愛おしさが滲み出ている眼差し...

少し影のある繊細な男性がハマりすぎていた

 

一方 この男、何かあるんじゃないか?と思わせる佇まいの松田龍平さんも良い

この"何かあるんじゃないか"というのは綾野さんにも言えるけれど、

松田さんが演じた日浅は まるで煙のように存在して確かに匂いはするのに手では掴めない

そんな雰囲気がした

 

また今野と日浅と共に働いていた女性〈筒井真理子〉も物語に良いスパイスを加えていたし、

今野と親しい仲なのが伝わってくる女性〈中村倫也〉とのやりとりはどこか切なく 美しかった

 

日浅の父〈國村隼〉、兄〈安田顕〉と今野の会話から、

ああ日浅は今野に何も告げることなく去っていた訳じゃなく 伝えるべきことはちゃんと伝えていたんだと気づけた

 

 

今野だけが一方的に心を開いていた訳じゃなかったんだと思えた